コードを書く前に知っておくこと
プログラミングの勉強を始めるとき、多くの人が「とりあえずコードを書いてみよう」と言います。それ自体は間違っていません。でも、ちょっと待ってほしい。
あなたは今「HTML」を学ぼうとしています。でも、そもそも HTMLが何のためにあるのか、Webページがどうやって表示されるのか を知らないままコードを書き始めると、すぐに「何やってるのかわからない」状態になります。
この第1週では、コードを書く量は最小限です。その代わり、「なぜHTMLを書くのか」「Webページが表示される仕組み」を根本から理解する ことに時間を使います。ここで築く土台が、この先のCSS・JavaScript、そしてAIとのコーディングすべてを支えます。
大事なこと: 速く進むことが目標ではありません。「理解して進む」ことが目標です。わからない部分があったら、このページを何度でも読み返してください。1回で全部わかる必要はありません。
Webページが表示される仕組み
あなたがブラウザの URL バーに https://webatives.com と打って Enter を押すと、画面にWebサイトが表示されます。この間に何が起きているか、順番に追ってみましょう。
ステップ1: ブラウザがサーバーに「ください」と言う
「ブラウザ」とは、Google Chrome や Safari のことです。あなたがURLを入力すると、ブラウザは世界のどこかにある「サーバー」というコンピュータに対して、「このページのデータをください」とリクエストを送ります。
イメージとしては、レストランでメニューを見て料理を注文するようなものです。ブラウザ(お客さん)がサーバー(厨房)に「これをくれ」と頼んでいる。
ステップ2: サーバーがファイルを送り返す
サーバーは、リクエストを受け取ると「はいどうぞ」とファイルを送り返します。このとき送られてくるのが HTMLファイル です。必要に応じて、CSSファイル(見た目)やJavaScriptファイル(動き)も一緒に送られてきます。
ステップ3: ブラウザが受け取ったファイルを「絵」に変換する
ブラウザは、受け取ったHTMLファイルを上から順番に読んでいき、「ここは見出し」「ここは段落」「ここは画像」と解釈して、画面に表示します。この「HTMLを読んで画面に描画する」処理のことを レンダリング と呼びます。
まとめ: URLを入力 → ブラウザがサーバーにリクエスト → サーバーがHTMLファイルを送信 → ブラウザがHTMLを読んで画面に表示。たったこれだけです。
ここで気づいてほしいのは、Webページの正体は「ファイル」であるということです。あなたのパソコンに入っているWordファイルやExcelファイルと同じように、HTMLファイルもただのファイルです。違いは拡張子が .html になっていることだけ。
つまり、あなたがパソコンで .html ファイルを作れば、それはもう「Webページ」です。サーバーにアップロードする前でも、自分のパソコンのブラウザで開けば表示できます。
HTMLとは何か
HTML は HyperText Markup Language の略です。日本語に訳すと「ハイパーテキスト マークアップ 言語」。
よくある誤解: 「HTMLはプログラミング言語だ」。これは違います。HTMLは「マークアップ言語」です。何が違うかというと:
- プログラミング言語(JavaScript, Python等): 「こうしたら、ああする」というロジック(処理)を書く
- マークアップ言語(HTML): 「これは見出しです」「これは段落です」と構造(意味)をつける
HTMLは、テキストに「ここは見出し」「ここは段落」「ここはリンク」という 意味のラベルを貼る ための言語です。ブラウザはそのラベルを読んで、適切に表示します。
たとえ話: 設計図と建物
家を建てるとき、設計図が必要です。設計図には「ここは壁」「ここはドア」「ここは窓」と書いてあります。大工さん(ブラウザ)はこの設計図(HTML)を見て、実際の家(Webページ)を建てます。
HTMLは Webページの設計図 です。「ここに見出しを置く」「ここに画像を置く」「ここにリンクを置く」と書くと、ブラウザがその通りに画面に表示してくれます。
「タグ」という概念
HTMLでは、タグを使って文章に意味を付けます。タグは < > で囲まれた英単語です。
<h1>これは見出しです</h1>
<p>これは段落です。</p>
<h1> は「ここから見出しが始まる」、</h1> は「ここで見出しが終わる」という意味です。/ が付いている方が「終了タグ」です。
最初は「なんでこんな面倒な書き方をするんだ」と思うかもしれません。でもこれは ブラウザに「ここは見出しだよ」と教えるため です。ブラウザは人間と違って「見た目」では判断できません。タグで教えてあげる必要があるんです。
VS Codeを導入する
HTMLファイルは、メモ帳(Windows)やテキストエディット(Mac)でも作れます。でも、プロのエンジニアは Visual Studio Code(VS Code) というエディタを使います。無料で、世界で最も使われているコードエディタです。
インストール手順
- code.visualstudio.com にアクセス
- 大きな「Download」ボタンをクリック(自分のOS用が自動判別される)
- ダウンロードされたファイルを実行してインストール
- インストール完了後、VS Code を起動
日本語化する(任意)
- VS Code を起動したら、左のバーにある四角いアイコン(Extensions)をクリック
- 検索欄に「Japanese」と入力
- 「Japanese Language Pack for Visual Studio Code」を見つけて「Install」をクリック
- 右下に「Change Language and Restart」と表示されたらクリック
- VS Code が再起動して日本語になる
英語のままでもOK: エンジニアの世界は英語が基本です。余裕があれば英語のまま使うと、将来の学習がラクになります。でも最初は日本語でも全く問題ありません。
最初のHTMLファイルを作る
いよいよ、自分の手でHTMLファイルを作ります。ここが AIに任せる前の土台を身につける最初の瞬間 です。
手順
-
フォルダを作る
デスクトップにmy-first-websiteというフォルダを新規作成してください。 -
VS Code でフォルダを開く
VS Code を起動して、メニューの「ファイル」→「フォルダーを開く」→ 先ほど作ったmy-first-websiteを選択。 -
新しいファイルを作る
VS Code の左側のエクスプローラーで、フォルダ名の横にある「新しいファイル」アイコン(紙にプラスマーク)をクリック。ファイル名をindex.htmlと入力して Enter。 - 以下のコードを打つ(コピペで済ませず、まずは自分の手で1文字ずつ打ちながら、コードの意味を読んで確かめてください)
<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
<meta charset="utf-8">
<title>はじめてのWebページ</title>
</head>
<body>
<h1>こんにちは、世界!</h1>
<p>これは私が作った最初のWebページです。</p>
</body>
</html>
まずは自分の手で1文字ずつ打って、書きながら意味を読んで確かめてください。指でキーボードを叩きながら1文字ずつ書き写すと、タグの構造が体に入ります。慣れてきたら、AIに同じものを作らせて出力を読み比べる練習に進みましょう(この後のセクションでやります)。
-
保存する
Ctrl + S(MacはCmd + S)で保存。 -
ブラウザで開く
Finderやエクスプローラーでmy-first-websiteフォルダを開き、index.htmlをダブルクリック。するとブラウザが開いて、あなたが作ったWebページが表示されます。
おめでとうございます。あなたは今、自分の手でWebページを作りました。
画面に「こんにちは、世界!」と表示されていれば成功です。もし表示されなかったら、コードを見直してみてください。大文字小文字、< と > の向き、/ の有無をチェック。1文字でも間違っていると動きません。これが「コードを書く」ということです。
HTMLの基本構造を理解する
先ほど書いたコードを、1行ずつ解説します。
<!DOCTYPE html> — 「これはHTMLです」宣言
ブラウザに「このファイルはHTML5で書かれています」と伝えるための宣言です。すべてのHTMLファイルの1行目に必ず書くお約束。意味を深く考える必要はありません。「1行目にこれを書く」と覚えてください。
<html lang="ja"> — HTML全体の始まり
HTMLのコード全体を囲む「大枠」です。lang="ja" は「このページは日本語で書かれています」という意味。Googleの検索エンジンやスクリーンリーダー(視覚障害者が使うソフト)がこの情報を使います。
<head> — ページの「裏側の情報」
ユーザーの画面には直接表示されない情報を入れる場所です。ページのタイトル、文字コード、SEO情報、外部ファイルの読み込みなどを記述します。
<meta charset="utf-8">— 文字化けを防ぐ。日本語を正しく表示するために必須。<title>— ブラウザのタブに表示される文字。Googleの検索結果にも使われる。
<body> — ページの「表側の内容」
ユーザーの画面に実際に表示される内容を入れる場所です。見出し、段落、画像、リンク、ボタン…… Webページに見えているものはすべて <body> の中に書きます。
<h1>— 見出し(heading)。h1が最も大きく、h6が最も小さい。ページに1つだけh1を使うのが基本。<p>— 段落(paragraph)。文章のまとまり。
暗記ポイント: HTMLファイルは <!DOCTYPE html> で始まり、<html> の中に <head>(裏側の情報)と <body>(表側の内容)がある。これだけ覚えれば、どんなHTMLファイルも読めるようになります。
HTMLを編集してみる
ここからは、先ほど作った index.html を少しずつ編集して、変化を観察します。
実験1: テキストを変えてみる
<h1> の中身を変えてみましょう。
<h1>私のポートフォリオサイト</h1>
<p>AIを使ってWeb制作を学習中です。</p>
保存して、ブラウザを更新(F5 または Cmd+R)してみてください。表示が変わったはずです。
実験2: タグを増やしてみる
<body> の中に、もう少し要素を足してみましょう。
<body>
<h1>私のポートフォリオサイト</h1>
<p>AIを使ってWeb制作を学習中です。</p>
<h2>自己紹介</h2>
<p>名前: あなたの名前</p>
<p>趣味: 映画鑑賞、読書、プログラミング</p>
<h2>今週の目標</h2>
<p>HTMLの基本構造を理解して、自分でWebページを作れるようになる。</p>
</body>
<h2> は2番目に大きい見出しです。<h1> がページのメインタイトル、<h2> がセクションのタイトル、という使い分けです。
実験3: titleを変えてみる
<head> の中の <title> を変更して保存→更新してみてください。ブラウザのタブに表示される文字が変わります。
<title>私のポートフォリオ | AIと学ぶWeb制作</title>
地味ですが、この <title> はSEO(検索エンジン最適化)で最も重要な要素のひとつです。Googleの検索結果に青い文字で表示されるのがこの <title> の中身です。
初心者がやりがちな3つのミス
多くの初心者がつまずくポイントを踏まえて、第1週で確実に引っかかる3つを紹介します。先に知っておくだけで、かなりの時間を節約できます。
ミス1: 閉じタグを忘れる
<!-- ❌ 間違い -->
<h1>こんにちは
<p>段落です
<!-- ✅ 正しい -->
<h1>こんにちは</h1>
<p>段落です</p>
HTMLは「開始タグ」と「終了タグ」でセット。終了タグ(</h1>)を忘れると、ブラウザが正しく解釈できなくなります。ブラウザは賢いので、ある程度は補完してくれますが、頼ってはいけません。
ミス2: 拡張子を .html にし忘れる
ファイル名を index や index.txt にしてしまうと、ブラウザがHTMLとして認識しません。必ず .html で終わるようにしてください。index.html です。
ミス3: 全角スペースを使う
<!-- ❌ 全角スペース(目に見えないが、エラーの原因になる) -->
<meta charset="utf-8">
<!-- ✅ 半角スペース -->
<meta charset="utf-8">
日本語入力がオンの状態でスペースキーを打つと「全角スペース」が入力されます。これはHTMLでは完全にNG。見た目では区別がつかないので、エラーが出たらまず全角スペースを疑ってください。
VS Code では、設定で「全角スペースを可視化する」拡張機能を入れておくと便利です。「Zenkaku」という拡張機能が人気です。
今週の課題
課題
以下の要件を満たす index.html を作成してください。
<!DOCTYPE html>から始まる正しいHTML構造<title>に自分の名前入りのタイトル(例: 「山田太郎のポートフォリオ」)<h1>にメインの見出し<h2>を使ったセクション見出しを 3つ以上(例: 自己紹介、趣味、学習の記録)- 各セクションに
<p>で説明文を入れる - 保存してブラウザで表示できること
AIに全部任せきりにしないでください。使うなら、まずAIに叩き台を作らせて出力を読み、意味がわかったら自分の手で1文字ずつ書き直してください。間違えたら直す。これが「学ぶ」ということです。
完成したら、スクリーンショットを撮っておいてください。土台を一通り終えたころにこのスクリーンショットを見返すと、自分の成長に驚くはずです。
提出前に、AIが作ったコードでよくある間違いも確認しておきましょう。
自己診断テスト
今週の理解度をチェックしましょう。全問正解を目指してください。
- URLを入力してWebページが表示されるまでの3ステップを、自分の言葉で説明できますか?
- HTMLは「プログラミング言語」ですか?「マークアップ言語」ですか?
<head>と<body>の違いを説明できますか?<h1>と<p>の違いは何ですか?- 終了タグに付いている
/の意味を説明できますか? <meta charset="utf-8">は何のために書きますか?<title>タグの内容は、画面のどこに表示されますか?
答えがすぐに出てこなかったら、記事を読み返してください。全問答えられたら、あなたはWeek 01をクリアです。
来週の予告 — Week 02: テキストを書き表す
来週は、HTMLで「文章を表現する方法」をもっと深く学びます。<h1>〜<h6> の使い分け、<strong> と <em> の違い、リスト(<ul>, <ol>)の作り方。
「ただ文字を書く」のと「HTMLで意味を付けて書く」のは全く違います。この「セマンティック(意味のある)な書き方」がわかると、SEOにも強くなるし、アクセシビリティも向上します。Week 02 でその感覚を掴みましょう。
Week 01 完了おめでとうございます。 あなたは今、世界中のWebページの「正体」を知りました。ここから先、すべてのWebページを見るたびに「これもHTMLで書かれてるんだな」と感じるはずです。来週もこの調子で進みましょう。