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フリーランスの経費一覧
何が落とせる?計算方法と仕訳例つきガイド

「この出費は経費にできるのか?」「家賃の按分割合はどう決める?」「経費率が高すぎると税務調査が来る?」——フリーランスが毎月直面する経費の疑問を、勘定科目別の一覧表・家事按分の具体的な計算例・業種別の経費率の目安まで、数字で答える。このガイドを読めば、経費計上の判断に自信が持てるようになる。

読了時間: 約15分 更新日: 2026年3月20日

フリーランスの経費とは「事業に直接必要な支出」のこと。通信費・消耗品費・地代家賃・交通費・外注費など多くの勘定科目が対象になる。自宅兼事務所の場合は家事按分で事業使用割合だけを経費計上できる。業種によるが、Web制作なら売上の50〜60%が経費率の目安だ。クラウド会計ソフトを使えば、銀行明細の自動取込・レシート撮影・仕訳の自動化で経費管理の手間を大幅に削減できる。

フリーランスの経費とは

経費(必要経費)とは、事業の売上を得るために直接必要な支出のことだ。所得税法第37条で「総収入金額に係る売上原価その他その収入金額を得るために直接要した費用」と定義されている。

つまり、判断基準は「その支出がなければ売上が得られなかったか?」という問いにYesと答えられるかどうか。仕事で使うPCの購入費は経費だが、休日に家族と行ったレストランの食事代は経費にならない。

経費計上の3つの原則

原則 内容 具体例
事業関連性 売上を得るために直接必要な支出であること クライアントとの打ち合わせ交通費 = OK
証拠書類の保存 領収書・レシート・請求書を保存(青色: 7年、白色: 5年) レシートがない交通費 → ICカード履歴や出金伝票で代用
合理的な金額 社会通念上、妥当な金額であること 打ち合わせ1回でコース料理5万円 → 税務署に否認されるリスクあり

経費を正しく計上すれば課税所得が下がり、結果として所得税・住民税・国民健康保険料が減る。例えば、年間売上500万円で経費が200万円なら、課税対象は300万円(+ 各種控除)になる。経費の計上漏れは「払わなくていい税金を払っている」状態だ。

経費にできるもの一覧

フリーランスが経費にできるものを勘定科目別に整理した。「これも経費になるのか」という発見があるはずだ。

勘定科目 具体的な内容 仕訳例 注意点
通信費 インターネット回線、携帯電話、サーバー代、ドメイン代 通信費 5,000 / 普通預金 5,000 私用と兼用の場合は家事按分が必要
消耗品費 10万円未満のPC周辺機器、文房具、USBメモリ、マウス、キーボード 消耗品費 8,800 / 現金 8,800 10万円以上は減価償却(または少額減価償却特例)
地代家賃 自宅兼事務所の家賃、コワーキングスペース利用料 地代家賃 24,000 / 普通預金 80,000
事業主貸 56,000 /
自宅の場合は面積按分または時間按分で事業割合を算出
水道光熱費 電気代、ガス代(暖房利用時) 水道光熱費 3,000 / 普通預金 10,000
事業主貸 7,000 /
在宅勤務の時間按分で30%程度が一般的
旅費交通費 電車・バス・タクシー代、駐車場代、出張時の宿泊費 旅費交通費 1,200 / 現金 1,200 ICカード履歴の印刷でもOK。通勤定期は按分が必要
接待交際費 クライアントとの会食・手土産・慶弔費 接待交際費 5,500 / 現金 5,500 参加者の氏名・関係を記録。1人あたり1万円以下が無難
新聞図書費 技術書、有料記事・サブスク(Udemy, note等)、業界雑誌 新聞図書費 3,300 / クレジットカード 3,300 事業に関連する書籍に限る。小説やマンガは原則不可
外注費 デザイン外注、コーディング外注、翻訳、撮影 外注費 110,000 / 普通預金 110,000 源泉徴収が必要な場合あり(個人への支払い)
広告宣伝費 Google広告、SNS広告、名刺印刷、ポートフォリオサイト運営費 広告宣伝費 30,000 / クレジットカード 30,000 ドメイン代は通信費でも広告宣伝費でも可(一貫性を保つ)
減価償却費 10万円以上のPC、カメラ、モニター、ソフトウェア 減価償却費 50,000 / 工具器具備品 50,000 PCは4年、ソフトウェアは3〜5年で償却。青色申告なら30万円未満は一括経費OK(少額減価償却資産の特例、2026年から上限40万円)
支払手数料 振込手数料、クラウドソーシング手数料、決済手数料 支払手数料 550 / 普通預金 550 銀行の振込手数料も忘れずに計上
租税公課 個人事業税、消費税(税込経理の場合)、印紙税、自動車税(按分) 租税公課 50,000 / 普通預金 50,000 所得税・住民税は経費にならない(後述)
保険料 フリーランス賠償責任保険、自動車保険(按分) 保険料 12,000 / 普通預金 12,000 国民健康保険・年金は「社会保険料控除」で別途控除
研修費 セミナー参加費、オンラインスクール、資格取得費用 研修費 33,000 / クレジットカード 33,000 事業と直接関係のある内容に限る

Point

勘定科目は「どれが正解」というルールはなく、一貫性が重要だ。例えば、サーバー代を「通信費」にするか「広告宣伝費」にするかはどちらでもいい。ただし一度決めたら変えないこと。税務署が見るのは「科目名」ではなく「中身が事業に必要な支出かどうか」だ。

家事按分の計算方法

自宅兼事務所で働くフリーランスにとって、家事按分は最も重要な経費テクニックの一つだ。家賃・光熱費・通信費など、私用と事業で共用する費用のうち、事業に使った割合だけを経費にできる。

按分方法1: 面積按分(家賃・光熱費向き)

自宅の総面積に対する事業スペースの割合で按分する。最もシンプルで税務署への説明もしやすい方法だ。

【具体例】家賃80,000円、自宅60m2、仕事部屋12m2の場合 事業割合 = 仕事部屋12m2 / 総面積60m2 = 20% 月間経費 = 80,000円 x 20% = 16,000円 年間経費 = 16,000円 x 12ヶ月 = 192,000円

ワンルームでリビングの一角にデスクを置いている場合は、デスク周辺の面積(約3m2程度)を事業スペースとして計算する。

按分方法2: 時間按分(通信費・光熱費向き)

1日の業務時間と全稼働時間の割合で按分する。在宅ワーカーの光熱費やインターネット回線に適した方法だ。

【具体例】インターネット回線5,500円/月、1日8時間仕事の場合 事業割合 = 業務8時間 / 起きている16時間 = 50% 月間経費 = 5,500円 x 50% = 2,750円 年間経費 = 2,750円 x 12ヶ月 = 33,000円

按分方法3: 使用割合(携帯電話向き)

通話履歴から事業用と私用の割合を出す方法。スマホの場合は、仕事用とプライベートの利用比率を通話時間やアプリ使用時間から算出する。

【具体例】携帯料金8,800円/月、通話の70%が仕事の場合 事業割合 = 70%(通話記録から算出) 月間経費 = 8,800円 x 70% = 6,160円 年間経費 = 6,160円 x 12ヶ月 = 73,920円

按分割合の目安

経費項目 按分方法 一般的な事業割合 根拠の示し方
家賃 面積按分 20〜40% 間取り図に仕事スペースを明示
電気代 時間按分 30〜50% 業務時間の記録
インターネット 時間按分 50〜80% 業務時間 / 全使用時間
携帯電話 使用割合 50〜70% 通話履歴の事業/私用比率
自動車関連 走行距離按分 50〜80% 走行記録(業務/全体)

Point

按分割合に「正解」はないが、根拠を説明できることが重要だ。「なんとなく50%」では税務調査で否認される。面積の計測値、業務時間の記録、通話履歴のスクリーンショットなど、客観的な根拠を残しておこう。按分割合は年に1回見直し、変更があれば記録を更新する。

経費にできないもの

次に挙げるものは、フリーランスが経費にできない(または経費にすべきでない)代表的な支出だ。知らずに計上すると、税務調査で否認され追徴課税を受けるリスクがある。

項目 理由 補足
所得税・住民税 税金の計算結果として発生する支出であり、経費に該当しない 個人事業税・消費税は経費OK
国民健康保険・年金 社会保険料控除として所得から別途控除される 経費ではなく「控除」で節税効果あり
生活費全般 食費・被服費・娯楽費は事業と無関係 仕事関連のスーツ・作業着は実態次第でグレーゾーン
罰金・反則金 違法行為に対するペナルティは経費不可 駐車違反の反則金、交通違反の罰金など
借入金の元本返済 借入の返済は「経費」ではない(利息部分は経費OK) 事業用ローンの利息は「支払利息」で計上可能
家族への給与(届出なし) 青色事業専従者給与の届出がなければ経費不可 届出済みなら全額経費(白色は年間86万円まで控除)
プライベートの旅行 事業に必要な出張でなければ経費にならない セミナー参加+観光の場合はセミナー関連費用のみ按分

グレーゾーンの判断基準

スーツ、メガネ、美容院代など「仕事にも使うがプライベートでも使う」支出はグレーゾーンだ。判断のポイントは以下の3つ。

フリーランスの経費率の目安

「経費率が高すぎると税務調査が来る」という不安を持つフリーランスは多い。実際、国税庁は業種ごとの経費率の統計を持っており、大幅に逸脱すると調査対象になりやすい。以下は業種別の目安だ。

業種 経費率の目安 主な経費内訳
Web制作・Web開発 50〜60% 外注費、サーバー代、ソフトウェア、PC機器、通信費
Webデザイン 40〜50% ソフトウェア(Adobe CC等)、素材購入、外注費、機材
ライター・編集 30〜40% 書籍・資料、取材交通費、通信費、ソフトウェア
エンジニア(SES・常駐) 40〜50% 交通費、PC機器、技術書、研修費、通信費
コンサルタント 30〜40% 交通費、接待交際費、書籍、セミナー、通信費
カメラマン・映像制作 50〜65% 機材(減価償却)、交通費、ソフトウェア、外注費
翻訳・通訳 25〜35% 辞書・資料、翻訳ソフト、通信費、研修費
【計算例】Webデザイナー、年間売上500万円の場合 経費率45%で計算すると: 年間経費 = 500万円 x 45% = 225万円 課税所得 = 500万円 - 225万円 - 青色申告特別控除65万円 - 基礎控除58万円 = 152万円 所得税(概算)= 152万円 x 5% = 76,000円 住民税(概算)= 152万円 x 10% = 152,000円 合計税負担 = 約228,000円 仮に経費率が30%(150万円)だった場合: 課税所得 = 500万円 - 150万円 - 65万円 - 58万円 = 227万円 所得税 = 227万円 x 10% - 97,500円 = 129,500円 住民税 = 227万円 x 10% = 227,000円 合計税負担 = 約356,500円 差額 = 約128,500円/年の節税効果

Point

経費率が高いこと自体は問題ではない。外注を多く使う案件なら経費率70%を超えることもある。重要なのは「実態に基づいた正当な経費」であること。架空経費や水増しは加算税・延滞税(最大40%+年14.6%)の対象になる。正しく使ったものは堂々と経費にしよう。

経費管理のコツ

経費の計上漏れを防ぎ、確定申告をスムーズにするための実践的なコツを6つ紹介する。

1. レシート・領収書はその日のうちに処理

月末にまとめてレシートを整理する方法は、紛失や計上漏れのリスクが高い。もらった当日にスマホで撮影し、クラウド会計に取り込むのがベストだ。撮影後の原本は年度別の封筒にまとめて保管する(青色申告は7年保存義務)。

2. 事業用の銀行口座・クレジットカードを分ける

プライベートと事業の口座を分けるだけで、経費の把握が劇的に楽になる。事業用口座の支出 = ほぼ全て経費、という状態を作れば帳簿付けの手間も大幅に減る。

3. 月次で経費をチェックする

年末にまとめて1年分を処理するのは地獄だ。毎月1回(月初に前月分)、15〜30分で以下をチェックしよう。

4. よく使う経費はテンプレート化する

毎月発生する経費(家賃按分、通信費按分、サブスク料金)は仕訳テンプレートを登録しておく。クラウド会計ソフトなら「自動仕訳ルール」で、特定の摘要に対して自動的に勘定科目を割り当てられる。

5. 交通費はICカード履歴を活用

電車・バスの交通費は領収書がないことが多い。SuicaやPASMOの利用履歴をCSVでダウンロードし、仕事関連の乗車分を抽出して経費計上する。出金伝票(日付・金額・行先・目的を記載)でも代用できる。

6. 30万円未満の資産は一括経費化を検討

青色申告者なら、少額減価償却資産の特例で30万円未満(2026年からは40万円未満に拡大)の資産を購入年度に一括で経費にできる(年間合計300万円まで)。20万円のPCを4年かけて減価償却するより、一括経費化したほうが初年度の節税効果が大きい。

クラウド会計ソフトで経費管理を自動化

手作業での経費管理は限界がある。クラウド会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードの明細を自動取込し、AIが勘定科目を推測して仕訳を作成してくれる。月5〜10時間の経理作業が月1〜2時間に短縮される。

サービス 月額(税込) 経費管理の特徴 こんな人におすすめ
freee 1,980円〜 レシート撮影→自動仕訳、経費レポート、銀行自動連携 会計初心者、スマホ操作メインの人
弥生会計オンライン 初年度無料 仕訳テンプレート豊富、サポート充実、確定申告ナビ コスト重視、サポートがほしい人
マネーフォワードクラウド 800円〜 銀行・カード自動連携、経費・請求書・確定申告の一体管理 請求書・経費・確定申告を一元管理したい人

いずれのサービスも無料体験期間がある。まずは自分の銀行口座を連携して、過去の明細がどれくらい自動仕訳されるか試してみるといい。

Point

クラウド会計ソフトの利用料自体も経費(通信費または支払手数料)になる。年間1万〜2万円の投資で経理の時間が10分の1になるなら、費用対効果は極めて高い。

経費・税金計算に使えるツール

粗利計算、源泉徴収の計算、請求書・見積書の作成まで、フリーランスの経理業務をサポートするツールを無料で提供している。登録不要でブラウザだけで使える。

よくある質問

フリーランスはどこまで経費にできますか?
「事業の売上を得るために直接必要な支出」であれば経費にできる。通信費、消耗品費、家賃(按分)、交通費、外注費、書籍代、ソフトウェア代など幅広い。ポイントは「事業との関連性を客観的に説明できるか」と「証拠書類(レシート・領収書)があるか」の2点だ。
家事按分の割合はどうやって決めますか?
面積按分(仕事部屋の面積 / 自宅全体の面積)と時間按分(業務時間 / 1日の活動時間)が代表的な方法だ。家賃は面積按分、光熱費や通信費は時間按分が一般的。按分割合は「根拠を示せること」が重要で、間取り図や業務時間の記録を保存しておこう。
経費率が高いと税務調査が来ますか?
経費率の高さだけで税務調査が来ることはないが、同業種の平均と大幅に乖離していると調査対象になりやすい。Web制作なら50〜60%、デザインなら40〜50%が目安だ。大切なのは経費率の数字より「全ての経費に正当な根拠があるか」だ。架空経費や水増しは厳しく処罰される。
レシートを紛失した場合はどうすればいいですか?
再発行を依頼するか、出金伝票(日付・金額・支払先・内容を自分で記録するメモ)で代用できる。ただし出金伝票はあくまで補助的な証拠書類であり、多用すると信頼性が下がる。クレジットカードの利用明細やネット購入の注文確認メールも証拠として有効だ。
カフェで作業した場合、コーヒー代は経費になりますか?
場所代としての意味合いで「会議費」や「雑費」として計上できるケースがある。ただし、毎日のカフェ代を全額経費にするのは無理がある。クライアントとの打ち合わせであれば「接待交際費」として問題ない。1人作業の場合はコワーキングスペース利用のほうが経費としての説得力が高い。
10万円以上のPCを買った場合、一括で経費にできますか?
青色申告者なら「少額減価償却資産の特例」で30万円未満(2026年からは40万円未満)の資産を一括で経費にできる(年間合計300万円まで)。30万円以上のPCは耐用年数4年で減価償却が必要だ。白色申告の場合は10万円以上20万円未満の一括償却資産として3年均等で償却するか、通常の4年償却を選ぶ。
確定申告で経費を計上し忘れた場合、後から修正できますか?
できる。「更正の請求」という手続きで、申告期限から5年以内なら経費の計上漏れを修正し、払いすぎた税金の還付を受けられる。e-Taxから電子的に提出することも可能だ。金額が大きい場合は税務署に相談するか、税理士に依頼するのが確実だ。