確定申告の基本
フリーランス・個人事業主として働き始めたら、避けて通れないのが確定申告です。会社員時代は年末調整で完結していた税金の手続きを、すべて自分で行う必要があります。「何から始めればいいのか分からない」という方のために、まずは基本を押さえましょう。
確定申告が必要な人
以下に該当する方は、確定申告が必要です。
- フリーランス・個人事業主として事業所得がある方
- 給与所得以外に年間20万円超の所得がある会社員(副業)
- 年間の給与収入が2,000万円を超える方
- 2か所以上から給与を受けている方
- 医療費控除やふるさと納税の控除を受けたい方
フリーランスとして1円でも事業収入がある場合は、基本的に確定申告が必要と考えておきましょう。事業所得が48万円以下(基礎控除額以下)で所得税がゼロになる場合でも、住民税の申告は別途必要です。
申告期限と罰則
確定申告の期間は、毎年2月16日から3月15日までです(土日祝の場合は翌営業日に延長)。この期限を過ぎるとペナルティが発生します。
| ペナルティ | 内容 | 税率 |
|---|---|---|
| 無申告加算税 | 期限内に申告しなかった場合 | 15〜20%(自主申告5%) |
| 延滞税 | 税金の納付が遅れた場合 | 年7.3〜14.6% |
| 重加算税 | 意図的な隠蔽・仮装があった場合 | 35〜40% |
注意
期限後申告でも、税務署から指摘される前に自主的に申告すれば無申告加算税は5%に軽減されます。「忘れた!」と気づいたら、一日でも早く申告しましょう。
白色申告と青色申告の違い
個人事業主の確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。青色申告は帳簿の手間が増える分、大きな税制優遇を受けられます。フリーランスとして本格的に活動するなら、青色申告を強く推奨します。
比較表
| 項目 | 白色申告 | 青色申告 |
|---|---|---|
| 届出 | 不要 | 「青色申告承認申請書」を提出 |
| 帳簿 | 簡易簿記(単式簿記) | 複式簿記(65万円控除の場合) |
| 特別控除 | なし | 最大65万円 |
| 赤字の繰越 | 不可 | 3年間繰越可能 |
| 家族への給与 | 事業専従者控除(上限あり) | 青色事業専従者給与(全額経費) |
| 少額減価償却 | 10万円未満 | 30万円未満まで一括経費 |
65万円控除を受ける3つの条件
-
複式簿記で記帳する
仕訳帳と総勘定元帳を作成します。会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)を使えば自動化できます。
-
貸借対照表と損益計算書を提出する
確定申告書に加え、期末の財務状況を示す書類を添付します。
-
e-Taxで電子申告する、または電子帳簿保存を行う
紙での提出だと控除額が55万円に減額されます。65万円の控除を受けるにはe-Taxでの申告が必要です。
ポイント
青色申告の届出は、その年の3月15日まで(新規開業の場合は開業日から2か月以内)に税務署へ提出します。届出を出していなければ自動的に白色申告となるため、早めの提出がおすすめです。
経費にできるもの一覧
経費を正しく計上することは、最も基本的かつ効果的な節税対策です。フリーランスWebデザイナーを例に、経費にできるものを勘定科目別にまとめました。「これも経費にできるの?」という項目も多いので、漏れなくチェックしましょう。
主要な経費項目
| 勘定科目 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 消耗品費 | PC、モニター、キーボード、マウス、デスク、椅子 | 10万円未満は一括経費(青色なら30万円未満) |
| 通信費 | インターネット回線、スマートフォン料金、ドメイン・サーバー費 | プライベート兼用は家事按分が必要 |
| ソフトウェア費 | Adobe CC、Figma、GitHub、各種SaaSサブスクリプション | 年払いでも月按分不要(支払時に全額経費) |
| 地代家賃 | 自宅家賃(事業按分)、コワーキングスペース利用料 | 自宅の場合、面積比や使用時間比で按分 |
| 水道光熱費 | 電気代(事業按分) | 在宅ワークの場合、使用時間比で30〜50%程度 |
| 旅費交通費 | 打ち合わせの電車代・タクシー代、出張費 | ICカード履歴や領収書を保管 |
| 新聞図書費 | 技術書、ビジネス書、Udemy等のオンライン講座 | 業務に関連するものに限る |
| 研修費 | セミナー参加費、カンファレンス入場料、資格試験料 | 業務スキル向上に直結するもの |
| 接待交際費 | クライアントとの会食、お歳暮・お中元 | 参加者・目的をメモに残す |
| 外注費 | 他のフリーランスへの業務委託費 | 支払調書の発行が必要な場合あり |
家事按分(かじあんぶん)のコツ
自宅兼事務所の場合、家賃や光熱費は「事業で使っている割合」だけを経費にできます。これを家事按分といいます。按分比率の決め方は主に2つあります。
- 面積比 - 自宅の総面積に対する仕事部屋の面積。例: 60m2のうち仕事部屋15m2 = 25%
- 時間比 - 1日のうち仕事に使う時間の割合。例: 8時間/24時間 = 約33%
Point
按分比率は一度決めたら年間を通じて一貫して使いましょう。税務調査で「なぜこの比率なのか」を説明できる根拠(間取り図、作業時間の記録など)を残しておくと安心です。
節税テクニック5選
経費の計上以外にも、フリーランスが活用できる節税制度はたくさんあります。以下の5つは特に効果が大きく、知らないと損をするものばかりです。
1. 小規模企業共済
フリーランスのための「退職金制度」です。毎月の掛金(月額1,000〜70,000円)が全額所得控除になります。年間最大84万円の控除は非常に強力です。
- 掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除
- 受取時は「退職所得」扱いで税負担が軽い
- 契約者貸付制度で掛金の範囲内で借入も可能
- 加入資格: 常時使用する従業員20人以下の個人事業主
2. iDeCo(個人型確定拠出年金)
老後資金を積み立てながら節税できる制度です。フリーランスは月額最大68,000円(年間816,000円)まで拠出でき、掛金は全額所得控除です。
- 掛金: 全額所得控除
- 運用益: 非課税
- 受取時: 退職所得控除または公的年金等控除が適用
- 注意: 原則60歳まで引き出せない
3. ふるさと納税
自己負担2,000円で各地の返礼品を受け取れる制度です。フリーランスの場合、確定申告で寄附金控除を申請します(ワンストップ特例は使えません)。
Point
控除上限額は所得に応じて変動します。フリーランスは所得が年によって変動するため、上限額シミュレーションで事前に確認しましょう。上限を超えた分は単なる寄附になります。
4. 青色申告特別控除(65万円)
前述の通り、複式簿記 + e-Tax申告で最大65万円の控除を受けられます。課税所得が400万円の場合、所得税率20%で計算すると約13万円、住民税10%で約6.5万円、合計約19.5万円の節税効果になります。
5. 少額減価償却資産の特例(青色申告限定)
通常、10万円以上の資産は減価償却(数年に分けて経費計上)が必要ですが、青色申告者は30万円未満の資産を購入した年に一括経費にできます(年間合計300万円まで)。
e-Taxでの申告方法
e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使えば、自宅から確定申告が完了します。税務署に行く必要がなく、青色申告特別控除も65万円の満額を受けられるため、利用しない手はありません。
事前準備
- マイナンバーカード(電子証明書付き)
- ICカードリーダー、またはマイナンバーカード読取対応のスマートフォン
- 利用者識別番号(e-Tax初回登録時に取得)
- 前年の確定申告書の控え(初めての場合は不要)
e-Tax申告の手順
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確定申告書等作成コーナーにアクセス
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(https://www.keisan.nta.go.jp/)にアクセスします。毎年1月上旬から利用可能です。
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マイナンバーカードで認証
ICカードリーダーまたはスマートフォンでマイナンバーカードを読み取り、本人認証を行います。スマホの場合はマイナポータルアプリが必要です。
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収入・所得を入力
事業所得(売上 - 経費)、その他の所得を入力します。会計ソフトからデータを取り込むことも可能です。
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所得控除を入力
社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、ふるさと納税の寄附金控除などを入力します。
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青色申告決算書を作成・添付
損益計算書と貸借対照表のデータを入力します。会計ソフトで作成済みの場合はデータ連携できます。
-
送信・納税
内容を確認して送信します。納税額がある場合は、振替納税、クレジットカード、コンビニ払い等で納付します。還付の場合は口座を指定すると約1〜2か月で振り込まれます。
おすすめ
スマートフォン(iPhone / Android)があれば、ICカードリーダーなしでe-Taxが利用できます。マイナポータルアプリ経由でマイナンバーカードをスマホにかざすだけで認証が完了します。
よくある失敗と対策
確定申告で特に多い失敗パターンと、その対策をまとめました。初めての確定申告で慌てないために、事前に確認しておきましょう。
1. 申告期限に間に合わない
毎年3月に入ってから慌てて準備を始め、期限に間に合わないパターンです。対策: 毎月の帳簿付けを習慣化し、1月中に前年の帳簿を締めることを目標にしましょう。会計ソフトを使えば、日々の入力は数分で終わります。
2. 経費の証拠(領収書・レシート)が残っていない
「経費にしたいけど領収書がない」というケースです。対策: スマホアプリで領収書を撮影し、クラウドに保存する習慣をつけましょう。電子帳簿保存法により、スキャナ保存の要件を満たせば原本の破棄も可能です。クレジットカードの明細やメールの購入確認も証拠として有効です。
3. 事業用とプライベートの口座が分かれていない
同じ口座で事業とプライベートの支出が混在すると、帳簿付けが煩雑になり、税務調査時にも不利です。対策: 事業用の銀行口座とクレジットカードを開設し、事業の入出金はすべてそちらで行うようにしましょう。口座を分けるだけで経理作業が格段に楽になります。
4. 源泉徴収の確認漏れ
取引先が源泉徴収を行っている場合、その分は前払いの税金です。確定申告で差し引くことで還付を受けられます。対策: 取引先から届く「支払調書」を確認し、源泉徴収額を正確に申告することで、払い過ぎた税金を取り戻しましょう。
5. 消費税の申告を忘れる
インボイス制度に登録して課税事業者になった場合、所得税の確定申告とは別に消費税の申告・納付も必要です。対策: 所得税と消費税の申告はセットで行うと覚えておきましょう。2割特例(売上税額の2割を納税)が利用できる場合は計算も簡単です。
6. 開業届を出していない
開業届を出さなくても確定申告はできますが、青色申告ができません。対策: フリーランスを始めたら、開業届と青色申告承認申請書を同時に税務署に提出しましょう。e-Taxから電子提出も可能です。