フリーランスとして案件を受ける際、最初のヒアリングがプロジェクトの成否を決めると言っても過言ではありません。ここで確認を怠ると、後から「そんな話は聞いていない」「想定と違う」というトラブルが発生します。
本記事では、初回MTGで必ず確認すべき7つのポイントと、ヒアリングシートの効果的な活用方法を解説します。
1. プロジェクトの背景と目的
なぜ聞くのか
「Webサイトを作りたい」という依頼の裏には、必ず目的があります。売上を上げたいのか、ブランディングなのか、採用強化なのか。目的を理解しないまま作ると、「きれいだけど効果がない」サイトができあがります。
聞くべき質問
- このプロジェクトを始めたきっかけは何ですか?
- 達成したい具体的な目標は何ですか?(数値目標があれば)
- なぜ今このタイミングで依頼されたのですか?
- このプロジェクトが成功した状態とは、どんな状態ですか?
プロのTips
「なぜ」を3回深掘りすると、本当の目的が見えてきます。「サイトをリニューアルしたい」→「なぜ?」→「問い合わせが減ったから」→「なぜ減ったと思う?」→「デザインが古くてスマホで見づらいから」
2. ターゲットユーザーの明確化
なぜ聞くのか
誰に向けたサイト・サービスなのかが曖昧だと、デザインも文言も定まりません。「誰でも使える」は「誰にも刺さらない」と同義です。
聞くべき質問
- メインターゲットはどんな人ですか?(年齢、性別、職業、地域)
- そのターゲットが抱えている課題は何ですか?
- 競合他社と比べて、御社の強みは何ですか?
- 既存顧客はどんな人が多いですか?
- ターゲットがよく使うWebサイトやアプリはありますか?
ペルソナシートの活用
ヒアリング内容をもとに「ペルソナ」を作成し、クライアントと共有しましょう。具体的な人物像があると、「この人にとって使いやすいか?」という判断基準ができ、デザインの方向性で揉めにくくなります。
3. 予算感と優先順位
なぜ聞くのか
予算を聞かずに見積もりを出すと、「予算オーバーで没」か「安すぎて利益が出ない」のどちらかになります。また、予算に対して要望が多すぎる場合、優先順位をつけて提案する必要があります。
聞くべき質問
- 今回のプロジェクトの予算感を教えていただけますか?
- この予算は確定していますか?調整の余地はありますか?
- 予算内で実現したい機能のうち、最も優先度が高いものは何ですか?
- 「これだけは絶対に必要」という機能はありますか?
- 逆に「あったらいいな」レベルの機能はありますか?
予算を聞けない場合
「予算は言えない」と言われた場合は、こちらから参考価格を提示しましょう。「一般的に同規模のサイトだと80〜150万円程度ですが、この範囲でお考えでしょうか?」と聞くことで、予算感を探れます。
4. スケジュールとマイルストーン
なぜ聞くのか
「なるはやで」という依頼を真に受けると、自分のスケジュールが崩壊します。また、クライアント側の確認期間を考慮しないと、承認待ちで全体が遅延します。
聞くべき質問
- 納品希望日・公開希望日はありますか?
- その日付は「絶対」ですか?調整可能ですか?
- なぜその日付なのですか?(イベント、キャンペーン、決算など)
- 御社側の確認・フィードバックにはどのくらい時間がかかりますか?
- 長期休暇や繁忙期など、連絡が取りづらい時期はありますか?
マイルストーンの設定
大きなプロジェクトでは、中間地点での確認を設けましょう。全部作ってから「イメージと違う」と言われると、大幅な手戻りが発生します。
-
要件定義完了
サイトマップ、ワイヤーフレームの承認。方向性を固める。
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デザイン確定
トップページデザインの承認。下層ページは方向性の確認。
-
テスト環境公開
実際のサイトを確認。内容・動作の最終チェック。
-
本番公開
正式リリース。公開後のサポート期間開始。
5. 決裁者と承認フロー
なぜ聞くのか
担当者と合意したデザインが、上司の一言でひっくり返る...。これを防ぐには、決裁者を把握し、適切なタイミングで承認を得る必要があります。
聞くべき質問
- このプロジェクトの最終決定権を持っているのはどなたですか?
- デザインの承認は誰が行いますか?
- 社内で確認が必要な部署はありますか?(法務、経営層など)
- MTGには決裁者の方にも参加いただけますか?
- 過去のプロジェクトで、承認フローで困ったことはありますか?
危険なサイン
「社長の最終確認が必要」と言われた場合、社長を直接MTGに呼べないか交渉しましょう。最後にひっくり返されると、それまでの工数がすべて無駄になります。
6. 技術要件と制約条件
なぜ聞くのか
使用できるサーバー、CMSの指定、セキュリティ要件など、技術的な制約は見積りに大きく影響します。後から「実は〇〇を使う必要があった」と言われると、見積りが崩れます。
聞くべき質問
- 現在使用しているサーバー・ドメインはありますか?
- 指定のCMS・プラットフォームはありますか?(WordPress、Shopify等)
- 連携が必要な外部システムはありますか?(CRM、MA、決済等)
- セキュリティに関する要件はありますか?(ISMS、Pマーク対応等)
- アクセシビリティの基準はありますか?(JIS X 8341-3等)
- 素材(写真、テキスト、ロゴ)は御社でご用意いただけますか?
確認すべき制約
| 項目 | 確認事項 | 影響 |
|---|---|---|
| サーバー | 既存 or 新規、スペック、SSL対応 | 技術選定、コスト |
| ブラウザ対応 | IE対応の有無、モバイル比率 | 工数、テスト範囲 |
| 多言語対応 | 対応言語、翻訳手配 | 構造設計、コスト |
| 運用体制 | 更新頻度、担当者スキル | CMS選定、マニュアル作成 |
7. 成果物と修正回数
なぜ聞くのか
「納品物」の認識がずれていると、追加作業を無料で求められます。また、修正回数を決めておかないと、永遠に終わらない修正地獄に陥ります。
聞くべき質問
- 最終的に必要な成果物は何ですか?(サイト本体、マニュアル、素材一式等)
- ソースコードの納品は必要ですか?
- デザインデータ(Figma、XD等)の納品は必要ですか?
- 公開後の運用サポートは必要ですか?期間は?
修正回数の設定
見積書に「修正回数の上限」を明記しましょう。一般的には、デザイン修正2回、コーディング後の修正1回程度が目安です。
- デザイン修正: 各ページ2回まで
- コーディング後の軽微な修正: 1回(まとめてフィードバック)
- 上限超過分: 追加費用として別途見積
- 仕様変更: 追加見積、スケジュール再調整
ヒアリングシートの活用
上記7つのポイントを漏れなく確認するために、ヒアリングシートを活用しましょう。事前に送付して記入してもらうことで、MTGの時間を有効に使えます。
ヒアリングシートのメリット
- 確認漏れ防止 - 質問リストがあれば、聞き忘れがない
- 事前準備 - クライアントが事前に考えをまとめてくれる
- 議事録代わり - 記入内容がそのまま合意事項の記録になる
- プロ感の演出 - 体系的なヒアリングで信頼感アップ